評価制度でやりがちな“3つの落とし穴”

これまで、介護事業者からのマネジメントシステムに関する相談は、たくさん受けてきましたが、実は、評価制度一つとってみても、多くの事業者が、制度をうまく活用できていません。それどころか「一度、導入したけれど、やめてしまった」という事業者も少なくありません。評価制度、キャリアパス制度の導入が、かえって職員のモチベーションを落とすことになりかねないのです。

その理由は、次の3つに集約されます。

理由その1 職員は評価なんてされたくない!

介護職の皆さんは、そもそも他の多くの業種のように、評価されることには慣れていません。また、評価する方も、同じです。そのことを前提に制度を構築しないと、大変なことになります。

 

例えば、以下のような例が後を絶ちません。

 

× 制度を導入したら、辞めるスタッフが出てきた

× 制度が複雑すぎて、ほとんどの職員が理解していない

× 評価する人によって、点数が全く違う

× 評価者が「人の評価なんてできない。嫌われたくない」と、全員満点でシートを提出してきた

 

では、不要かというと、そうではありません。数年前におこなったアンケートによると、介護現場で働くスタッフの不満のうち「正当な評価をしてくれない」は、第4位に入っています。

また、キャリアパス制度などは、介護職員処遇改善加算の条件にもなっていますから、導入しないわけにもいきません。

理由その2 評価基準があいまい

以下の例をご覧ください。

 

 

 

 さて、皆さんは、この失敗例のどこがいけないのかが、おわかりでしょうか?

ピンとこない方は、ぜひ、このシートを見ながら、誰かを実際に評価してみてください。

自信を持って、点数をつけることができるでしょうか?

きっと、難しいと思います。なぜなら、評価の基準が不明確だからです。

これでは、評価される側としては「上司の“好き嫌い”で、点数をつけているのではないか」と思われても、仕方がありません。

これだったら、厳しい言い方ですが、やらない方がましです。納得度も低いですし、そもそも評価制度は、評価結果をもとにして、社員を育成するための“道具”です。

このような曖昧な基準だったら、教育には全く役には立ちません。

こういう制度を私たちは「人に値札をつける制度」と呼んでいます。

「あなたは◯◯円の価値の人」と“値札”をつけているにすぎないのです。

かといって、具体化するのも難しいですね。営業職などのように「○千万円売上をあげた」のように、評価の基準を数値化することが難しいのが、介護の仕事です。

 

以前、ある法人の評価制度で「事故・ヒヤリハットが、半期で2回以下だった」というような評価基準を見たことがありますが、これでは事故を起こすことが前提となってしまいます。笑ってしまうような失敗事例ですが、無理やり数値化しようとすると、このようなものになりかねない難しさがあります。

 

理由その3 評価基準が介護現場の仕事にマッチしていない

現場にマッチしていないため、制度が上滑りしてしまう例も、多いように思います。

これは、制度構築過程に問題があります。

このような状態になっていませんか?

    • 制度づくりメンバーに、現場スタッフが入っていない
  • 業界誌などで紹介された成功例を、そのまま使う
  • 1年以上かけて議論している(時間をかけてしまっている)
  • 導入しっぱなしで、リニューアルしていない

評価制度を経営者が、社労士やコンサルタントなどの専門家と密室にこもってつくったのでは、現場にマッチした制度ができるはずはありません。専門家が提案するものを、そのまま導入する方が、手間はかかりませんが、そうしてしまうから、納得度が低い制度になってしまうのです。

 

「給与や賞与とどう連動するか」とか、「等級をどのようにするか」については、経営者が判断すべきことですから、現場を入れて議論する必要はありませんが、評価基準は、現場の「理想的な職員像」にそってつくることになりますから、実際に評価にあたる中堅の職員を交えてつくりこみ作業をすべきです。